きゅうりに4本の脚をつけた馬と、なすで作った牛。お盆になると現れるこの2台は、飾りというより「ご先祖さまの乗り物」です。名前は精霊馬(しょうりょううま)。形だけでなく、速度まで役割分担されています。

きゅうりは「早く来る馬」、なすは「ゆっくり帰る牛」
東海農政局の資料では、迎え盆には足の速い馬に見立てたきゅうりを飾り、早く来てもらう。送り盆には足の遅い牛に見立てたなすを飾り、ゆっくり帰ってもらうと説明されています。
つまり、行きも帰りも同じ乗り物ではありません。「早く会いたい」と「名残惜しい」が、野菜2本で表現されています。
なぜ、きゅうりとなすなのか
ここは断定できません。農林水産省の資料も、理由は諸説あり、はっきり分かっていないとしています。有力なのは、どちらもお盆のころに身近な夏野菜だったから、という説明です。
細長いきゅうりは馬、どっしりしたなすは牛に見立てやすい。季節の供え物と、動物らしい姿がうまく重なったのでしょう。ただし、これは由来が一つに確定している話ではありません。
作り方は簡単。でも「向き」は一つに決められない
作り方は、きゅうりとなすに、つまようじや短くした割り箸を4本ずつ刺して脚にするだけです。水平に刺すより、少し外側へ開くようにすると立ちやすくなります。
迷いやすいのが置く向きです。仏壇側へ向ける、玄関側へ向ける、迎えと送りで反対にするなど、家や地域で伝え方が異なります。日本気象協会の記事も地域差に触れており、全国共通の「絶対に正しい向き」が一つあるとは言い切れません。家で受け継いだやり方があるなら、それを優先するのが自然です。
精霊馬を飾る日は?
8月13日から16日をお盆とする地域では、13日の迎え盆に用意し、16日の送り盆まで飾る形がよく知られています。一方、7月にお盆を行う地域もあります。日付も飾り方も地域差があるため、初盆など大切な場面では家族や菩提寺に確認するのが確実です。
30秒で分かる精霊馬
- きゅうり:足の速い馬。早く帰ってきてほしい気持ち
- なす:歩みのゆっくりした牛。名残を惜しみながら見送る気持ち
- 材料:きゅうり、なす、つまようじまたは割り箸
- 向き・日程:地域や家の習慣によって異なる
たった2本の夏野菜に、迎える人のうれしさと、見送る人の寂しさが同居しています。精霊馬が今も目を引くのは、見た瞬間に意味が伝わる造形だからかもしれません。
見たもの
- 東海農政局「東海の和食」第27号(精霊馬の意味、きゅうり・なすを使う理由)
- 日本気象協会「お盆に見かける、きゅうりやなすの飾り『精霊馬』って何?」(地域差、夏野菜との関係)
- Wikimedia Commonsの写真ページ(画像の作者・ライセンス)
確認日:2026年8月6日。画像:Katorisi / Wikimedia Commons、CC BY 3.0。